
家族や親族が亡くなった場合、葬儀をどのように行うかを決める際に重要なのがその人の宗教や宗派です。しかし、日本では普段の生活の中で宗教との関わりが薄い場合も多く、急に宗教がわからないというケースもあります。葬儀は基本的にその宗教にもとづいて行われるため、宗教ごとの葬儀の特徴を事前に理解しておくことが大切です。
日本における宗教・宗派別の葬儀の特徴
日本は、正月に神社に参拝したり、クリスマスを祝ったりと、さまざまな宗教的な行事を取り入れて生活しています。日常的に複数の宗教が共存しているという点が、日本の特徴ともいえるでしょう。仏教
仏教では、故人が輪廻転生を繰り返し、生まれ変わるという考え方が根底にあります。死は新たな命へと続く過程であり、葬儀は故人が成仏できるように祈り、遺族が別れを受け入れるための儀式です。仏教にはさまざまな宗派があり、たとえば浄土真宗では葬儀が阿弥陀如来への感謝を表すために行われます。
神道
神道では、故人の魂が神々の世界に戻り、祖先の神として子孫を見守る存在になると考えられています。また、死は穢れ(けがれ)とされ、その穢れを祓う目的も兼ねた葬儀が行われます。キリスト教
カトリックでは、故人の罪が赦されて天国に行けるよう祈りを捧げます。プロテスタントでは、すべての人が天国に行けると信じているため、葬儀は故人の信仰を讃え、神のもとで安らかに過ごせるよう感謝の気持ちを込めて行われます。無宗教
無宗教の場合、宗教的な制約はなく、故人や遺族の希望に合わせた自由な葬儀を執り行うことができます。感謝の気持ちを伝える場やお別れの時間として、個別のスタイルに合わせた葬儀が行われることが多いです。仏教・神道・キリスト教・無宗教の違い
宗教や宗派ごとに葬儀の内容や形式が異なります。それぞれ独自の儀式やマナーがあるため、葬儀に参列する際は事前に確認しておくとよいでしょう。ここでは、各宗教・宗派の特徴を簡単に解説しますので、葬儀に参列する際の参考にしてください。仏教は宗派によって特徴が異なる
日本では仏教式の葬儀が一般的ですが、仏教にも多くの宗派があり、宗派によって葬儀の進行やマナーが異なります。主な宗派には浄土真宗本願寺派、浄土宗、曹洞宗、日蓮宗、真言宗、臨済宗、天台宗などがあります。たとえば、浄土真宗では「南無阿弥陀仏」といった念仏を唱えることが多い一方、日蓮宗では「南無妙法蓮華経」を唱えることが特徴です。葬儀では、僧侶が読経を行い、参列者が焼香をし、数珠を使うことが一般的です。
また、通夜、葬儀、告別式の三日間にわたって行われることが多いですが、近年は家族葬が増えています。
神道は穢れを清める儀式
神道の葬儀では、神主が祝詞を読み、玉串奉奠(たまぐしほうてん)という儀式を行います。玉串奉奠は仏教で言うところの焼香にあたります。香典は「御玉串料」と呼ばれ、数珠は使用しません。神道では故人の魂を家に迎え、守護神とするために葬儀を行うため、お悔やみの言葉は「御霊のご平安をお祈りいたします」や「謹んでお悔やみ申し上げます」といった表現が一般的です。
仏教用語である「成仏」や「供養」といった言葉は使わないように注意が必要です。
キリスト教では死を神の祝福とする
キリスト教の葬儀は、教会で行われることが多く、牧師によって執り行われます。聖歌や讃美歌が歌われ、焼香に代わって献花が行われます。香典は「御花料」と呼ばれ、死は神の祝福と考えられているため、仏教のようなお悔やみの言葉は避けるのがマナーです。カトリックとプロテスタントでは葬儀の進行に違いがあるため、宗派に応じたマナーを守ることが重要です。
無宗教は自由度が高い
無宗教の葬儀は、宗教的な儀式を行わず、故人や遺族の希望に合わせた形式で執り行います。読経や祈りなどは行わず、参列者が黙とうを捧げたり、故人が好きだった音楽を流したりすることが多いです。自由で個性的な葬儀が可能なため、故人の生前の意思や家族の希望を反映させた形にすることができます。
宗教や宗派がわからない場合の調べ方
宗教や宗派がわからない場合、どうすればよいかについていくつかの方法があります。日本では宗教や宗派に対する意識が薄いことが多いため、故人や自分の宗教が不明な場合もあります。そんな時の調べ方を紹介します。親戚に確認する
宗教や宗派について最も簡単に確認できる方法は、親戚に尋ねることです。多くの場合、親戚同士で同じ宗教や宗派を信仰していることが多いため、年配の方に尋ねると確実な情報が得られるでしょう。とくに、お寺とのつながりが深い家族では、宗教や宗派がはっきりしていることが多いので、親戚に聞いてみるのが手軽な方法です。
仏壇やお墓を確認
家に仏壇がある場合やお墓がある場所に行ける場合は、仏壇や位牌を確認してみるのもひとつの方法です。位牌に書かれている戒名やお墓に刻まれた情報から、どの宗教や宗派に属しているかを知ることができることがあります。もし不明な場合、お墓があるお寺に問い合わせてみるのもよいでしょう。お寺が宗派を明確に把握している場合が多いため、情報を得る手段として有効です。